骨粗鬆症性椎体骨折(OVF:Osteoporotic Vertebral Fracture)
骨が脆弱となる骨粗鬆症を基盤として、転倒など軽微な外傷や咳などちょっとしたことで背骨が骨折したものを骨粗鬆症性椎体骨折と呼びます。以前は圧迫骨折といわれておりましたが、受傷形態を示す用語である圧迫骨折ですが、OVFの中には破裂骨折型や強直性脊椎骨増殖症(DISH)による伸展損傷などもありますので、圧迫骨折とは言わず、椎体骨折(OVF)と呼ぶようになっております。
OVFの治療
OVFの治療の基本としては、保存療法となります。一般的な骨折ですが、残念ながら現在のところ、標準的な治療プロトコールは確立されておりません。骨粗鬆症の程度、椎体骨折の圧壊、後弯変形、痛み、ADLなどが症例によりさまざまで安静だけで治癒する症例から偽関節や遅発性麻痺を生じて手術を生じる症例までさまざまです。高齢者の骨折ですので、疼痛の軽減、受傷前のADLへの日常生活への早期復帰が重要となります。
保存療法
急性期の疼痛が強い場合は入院での1週間程度の安静、2週目から徐々にベッドアップから離床させて3-4週で装具装着で起立歩行訓練を行うことが多いです。
椎体骨折の40%が入院治療されており、そのうちの92%が保存療法を行わていた。鎮痛剤の使用割合としてカルシトニン56%、NSAIDs内服47%、NSAIDs座薬36%、局所注射27%、外用剤20%、神経ブロック7%との報告されてます。
骨粗鬆症性椎体圧迫骨折に対する外固定治療の現状と課題.倉都 滋之ら Osteoporosis Jpn 2009
装具療法は91%の施設で施行されており、軟性コルセット43%、硬性コルセット40%、体幹ギプス32%、腰部固定帯28%と外固定方法にもばらつきがあり標準化されておりません。
保存療法で約90%の症例は骨癒合に至り、疼痛も改善することが多いですが、残りの10-20%の患者さんでは偽関節や椎体圧壊により慢性疼痛、後弯変形によるADLの低下をきたします。
経皮的椎体形成術(BKP)
十分な保存療法を行っても、体動に伴う腰背部痛が強く、レントゲンやCT、MRI画像で骨折椎体の不安定性、癒合不全が認められる症例がBKPの適応となります。
BKPは全身麻酔は必要ですが、5mmほどの小切開で30分程度の手術時間で行えますので、身体の予備能力の低下した高齢者でも対応可能なことが多いです。BKPの除痛効果は手術翌日から認められ、体動困難で離床できなかった患者さんが翌日から座位保持や離床できることも多くADLを早期に改善させる低侵襲治療です。