元SMAPのオートレーサー森且行選手の過酷なリハビリに感銘!

PPS 低侵襲治療
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オートレースのレース中に転倒して、多発外傷を生じて、肋骨骨折、腰椎破裂骨折、骨盤骨折などを生じて5回の手術を乗り越えて、リハビリをおこなっている様子が撮影されていました。レントゲン画像も出されましたが、かなり深刻な外傷ではることは一目でわかりました。

OS NOW Instruction No.26 ダメージコントロール整形外科
No.26は“多発外傷”“ダメージコントロールオルソペディックス;DCO”を取り上げている。DCOとは,外科分野で使用されていたダメージコントロール手術という概念を整形外科に応用することで,広く知られるようになってきている言葉である。 多発外傷の患者が,頭部・胸部・腹部外傷と四肢・骨盤骨折を合併していることはまれではな...

日本でも多発外傷に対応できる、外傷センター設立や低侵襲な手術によって、全身状態を安定化させるdamage control surgeryのstrategyが確立されつつあり、ひと昔なら救命できなかった外傷も救命でき、社会復帰できるまでになりました。医療の進歩には、救急医、外傷外科医、麻酔科医、ICU、看護師,PTなどさまざま職種の努力と研鑽の結果だとおもいます。20年前研修医していたころは多発外傷に対するプロトコールなどなく毎回非常に苦労しました。

 以上技術の発展もありますが、もちろん、森選手の諦めないリハビリテーションの努力の結果によるものです。

経皮的椎弓根スクリューを用いた、胸腰椎後方固定術、骨盤骨折は低侵襲!

経皮的椎弓根スクリュー(PPS:percutaneous pedicle screw)の発展によって2000年代から低侵襲脊椎外科の進歩がなされました。

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PPS術中
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術後創部

PPSは透視下に約2cm程度の小切開を持ちいて、椎弓根スクリューを挿入する手技です。従来法では正中から外側まで切開して、後方の筋肉を付着部から切離、展開してから椎弓根スクリューを挿入してました。出血量、手術時間の延長など患者さんに負荷がかかるため、多発外傷患者さんでは、DICになって止血困難などの状態も想定されるため、侵襲の大きな治療はなかなか受傷早期に行うことが困難でした。PPSでは短時間、出血量も多くなくできますので、受傷早期に後方固定を行うことで離床を早めて、臥床による肺炎や廃用症候群DVTなどの合併症を予防でき、全身状態改善後に早期に二期的に最終的な内固定を行うことができます。

腰椎破裂骨折、骨盤骨折、四肢の骨折に対して、受傷早期にPPSで腰椎、骨盤の後方固定術を行い早期離床を行えました。

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PPSでの後方固定術

胸腰椎の後方固定術は骨折椎体が骨癒合すれば抜釘が行えます。抜釘を行うと固定された椎間の可動性も得られるので、骨折椎体の骨癒合とmotion segmentの獲得から脊椎の可動性が得られ、ADLおよび隣接椎間の障害も少なくなります。

その根拠として、豊根先生の論文が有名ですが、単椎間の固定(骨移植なし)で骨癒合後に抜釘することで、椎間の可動域の温存と椎間板変性が生じないという有名な論文です。これによって、PPSでのwithout fusion(骨移植なし)での固定での大義名分が得られて、積極的にPPSでの固定が推奨されるようになりました。

骨盤骨折に関してですが、腸骨screwは後上腸骨棘を落として、刺入してもやっぱりでっぱりがめだつのと、仙腸関節をまたいで固定されているので、可動域の減少になるので、こちらも骨癒合後には抜釘が必要です。テレビで森選手が体育すわりができないなど、ADL制限について述べれれておりましたが、抜釘後にはかなり可動域が改善してました。森選手の懸命なリハビリテーションの努力には本当に感銘を受けました。整形外科医として一人でも多くの患者さんが元の生活に戻れるよう努力を研鑽していきたいものです。

森選手は年末、年始に復帰レースを予定にトレーニングを進めているようですので、温かく見守っていきたいです。

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